青木淳教授『福島の磨崖仏、鎮魂の旅へ』福島・南相馬の石窟で新発見

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日本三大磨崖仏の一つと称される、南相馬市の大悲山石仏。この地に点在する磨崖仏に関して、青木淳教授を中心とした調査の結果、これらの作られた年代が、平安時代初期にさかのぼるものだ、ということが新たに確認されました。そうした事実について、日本美術史の専門家が渡来文化との関係を交えつつ論じています。大屋孝雄氏による撮りおろし写真とともに、福島再生の祈りを込めて紹介した一冊です。今後も青木教授による研究に期待が寄せられます。

『福島の磨崖仏、鎮魂の旅へ』

著者:青木淳(共通教育 教授)
発行元:淡交社
発売日:2017年9月21日刊
定価:2,100円+税

「南相馬市の大悲山石窟に出合ったのは、2017年の春のこと。カメラマンの大屋孝雄さんに『本当にすごい石窟だから、だまされたと思って先生も一緒に来てよ』とまで言われると、行かないわけにはいかなかった。『春一番が気持ちいいね~』などと、物見遊山な気持ちでその場所に降り立った私だったが、その石窟の中に入った途端、遊び心は消えてしまった。今までに見たことのないような洞窟の中に、古い石仏が6体。美しい線刻の壁画が、外光に照らされてわずかに見えた。ここは、間違いなく長い時間をかけて人々が祈りを捧げてきた場所だと思った。それから半年間、この洞窟の研究を行った。すると、わが国ではほとんど例のない石心塑造の巨大仏像群だとわかった。さらにあの線刻壁画は、中国の北朝時代にさかのぼる図様と似ていることも。そして大震災で倒れた覆い堂の下から、10世紀以前に作られた仏様に献灯するための灯明皿も出土した。本格的な調査の結果、わが国でも稀有な9世紀の石窟の遺構だとわかった。それらはまるで、古代に東北に来た渡来人たちの置き土産のように感じた」(青木淳教授)

2017年11月22日 09:56