企業の人事担当者・卒業生に聞く

多摩美出身者は、ビジネスの最前線からどのような評価を受けているのでしょうか。また、その卒業生たちが学んだ多摩美での4年間は、ビジネスの現場でどう生かされているのでしょうか。さまざまな業界で活躍する企業人たちに尋ねました。

サントリー
コミュニケーションズ
株式会社

消費者を把握し、商品そのものを考える
コミュニケーション力とやり抜く力を評価

サントリーグループにおけるより高い専門性とスピード化を目的に、2017年4月新設。「宣伝・デザイン本部」「デジタルマーケティング本部」「お客様リレーション本部」を置き、酒類・食品・健康食品事業など、グループ全体のブランドコミュニケーション支援や、顧客コミュニケーション業務を担う。
http://www.suntory.design/
取材日:2018.01.30

デザイン部
チーフクリエイティブディレクター
デザイン部長

水口 洋二さん

デザインに不可欠である人間力と、
在学中に培われた思考の
トレーニングが生きている

私たちのミッションは、「すべてのステークホルダー(消費者含め企業に関係する人)をワクワクさせて、イノベーションの起点になること」です。ワクワクとは、みんなが明るい未来を期待でき、楽しいと思えること。そのワクワクを創造するために、商品開発の際は、マーケッター、研究開発、そしてデザイナーと、担当が異なるメンバーがチームとなって取り組んでいます。

大きなものを動かす企業内デザイナーとしての役割

当社を希望してくれる学生の方には、インハウス(企業内)デザイナーとしての意味と役割についてぜひ考えてほしいですね。私たちの仕事は、今の消費者や世の中の傾向を把握し、その中で商品がどうあるべきかといったコンセプトづくりや事業戦略など、商品全体のデザインです。ですから、「目に見える表現だけをやりたい」という考えのデザイナーには不向き。もっと複雑で大きなものを動かしたいという思いが強い人でないと、当社に来るメリットはないでしょう。大組織の中でプロジェクトを動かしていくには、高いコミュニケーション能力や革新性、そしてやり抜く力といった「人間力」が不可欠で、それは実際、アウトプットにも表れるものです。

デザインの技術や思考力はあらゆる分野で役立つ

現在4名の多摩美卒業生が、デザイナーとして『伊右衛門』はじめ多くのヒット商品に携わっています。共通しているのは、プレゼンの上手さと技術、そして思考力ですね。村井さんは、デザインの視点が面白いだけでなく、視点の根拠がロジカルで、誰もがその提案理由や目的を共有することができる。思考のトレーニングがよくできていると感じます。社会ではこの「共有」ができないと意味がありません。これからのデザイナーにも、この思考力を期待しています。
また、当社グループには「デザイン経験者」のマーケッターを募集している会社もあるように、今後、デザイナーの活躍の場はあらゆる分野に及ぶと思われます。デザインの技術や思考力はどんな仕事にも役立つものなので、興味の幅を広く持ち、柔軟性をもってその力を生かしてほしいですね。

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サントリーデザイン部。キッチンも併設されており、他部署の人もラフに立ち寄って意見交換やアイデア出しを行える空間となっている。
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デザイン部
デザイナー
村井 源さん
2016年|プロダクトデザイン卒

社会への影響を考える思考力と
共通言語で構築する力を生かせる

現在2年目ということもあり、『BOSS』や『金麦』をはじめ、いろんなブランドを経験させてもらっています。チーム内で僕がデザイナーとして心掛けていることは、開発を俯瞰して見るということ。コンビニの棚を見た時に自分自身がお客さんとして何に惹かれるかを常に思い出しながら提案しています。ネーミングやコンセプトを考える時も同じです。
飲料は“すぐそこにある”くらい身近な存在。だからこそ日常の中で顔の緊張が緩み、ホッっと気が抜けるきっかけになれるはず。商品を通して、「お疲れ様」とか「今日も頑張ろう」といった前向きな気持ちを世の中に生み出すことが、僕の仕事だと思っています。

物事の成り立ちを想像する視点が財産に

高校時代に、ものをつくる立場の仕事をしたいと思い、一人で作品に向き合うより人と関わりながら仕上げていく制作スタイルに興味を持ったことから、多摩美のプロダクトを選択しました。サントリーは、部署関係なく柔軟でフラットに意見が言い合える環境です。いい意味で変な人が多く刺激的(笑)。ロジカルな思考と表現へのこだわりは勿論、アツい人情をみんな持っていて、そこでの議論の中で今の時代の空気感にあった“ユーザーの気持ちの作り方”を提案できれば、それは結果的に売れる商品にもなると考えています。

学生時代、大橋由三子先生(プロダクトデザイン教授)に学んだことで特に今役立っていることがふたつあります。ひとつは、「自分がつくるものが、社会にどう影響を与えるか考える」ということ。表現より先に、何のために作るのか、それを伝えるためにどんなアイデアが必要かを考える習慣が身に付きました。ふたつ目は、デザイナー間だけでなく他の人にも共通言語として使える言葉でコンセプトを構築する、ということです。これらのトレーニングは今の仕事にそのまま生きています。
美術やデザインを目指す人はどうしても、アウトプットされたものばかり見えがちです。でも、それより「何でこうなってるの?」といった物事の成り立ちを想像する視点を持てば、もっと見方や考え方が変わるでしょう。このような視点も、学生生活を通して鍛えられた大事な財産です。

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※掲載者の所属などは記事公開時のものです。