企業の人事担当者・卒業生に聞く「多摩美への期待と実績」

多摩美出身者は、ビジネスの最前線からどのような評価を受けているのでしょうか。また、その卒業生たちが学んだ多摩美での4年間は、ビジネスの現場でどう生かされているのでしょうか。さまざまな業界で活躍する企業人たちに、多摩美に求められる期待と実績について尋ねました。

株式会社
朝日新聞社

ニュースグラフィック界を牽引する
多摩美卒業生の発想力と突破力

朝日新聞(朝刊620万部、夕刊190万部)の発行と朝日新聞デジタルの配信を中心に、文化催事、高校野球をはじめとするスポーツ催事の主催・運営、その他各種コンテンツ配信などの事業を行う総合メディア企業。
http://www.asahi.com/

報道局デザイン部
部長
山本 桐栄さん

自由な発想で
躊躇なくチャレンジする力を
ますます発揮してほしい

報道部門のデザイナーというとイメージしづらいかもしれませんが、ひとことで言うと、ニュースや情報をデザインの力で伝えるという仕事です。朝日新聞社は、新聞紙面制作だけでなく、デジタルでの発信にも力を入れています。学生のみなさんも、手元のスマホでニュースや情報を得ることが多いという人もいらっしゃるのではないでしょうか。朝日新聞の読者でなくても、気づかないうちに、デザイン部のデザイナーがつくったインフォグラフィックやイラストなどを、ポータルサイトなどで目にしているかもしれません。

広がり続けるデザイナーのフィールド

今、報道におけるビジュアルの重要性は、非常に高まっています。デジタル技術の進展とともに、表現方法も多種多様となり、会社におけるデザイナーのフィールドも広がっています。
現在デザイン部には5名の多摩美卒業生が在籍していますが、それぞれ多才かつ多彩。朝日新聞デザイン部がニュースグラフィック界のトップランナーと言われてきたのも、多摩美卒業生たちの力によるところがとても大きいと感じています。新聞社のデザイナーの仕事とは、「伝える」ことにこだわり、デザイナー自らの発想で、既存の殻を打ち破っていくことだと思いますが、多摩美の卒業生は、自由な発想力を持っていてチャレンジすることに対して躊躇がない。大学の気風でもあるのでしょう。紙面・デジタルともに枠にとらわれない様々な表現への挑戦にも中心となって取り組んできました。こうした非常に有能な先輩デザイナーの流れを受け、山本美雪さんも平昌五輪ではイラスト力を生かして、若い人向けの新たな手書きのデジタルコンテンツに打ち込んでいました。このような多摩美卒業生の突破力が、我々の強みになっています。これからも、変化の時代に、その力をますます発揮してもらいたいですね。

土台があってこそ仕事で能力が開花

入社後は、日々のデザインワークについて先輩社員が丁寧に教えます。入社時から即戦力となる人はいません。仕事を通してデザイナーとしてのスキルを高め、将来的にアートディレクションができる人材を求めています。
多摩美の学生は、課題などでかなり鍛えられると聞いていますが、そういう土台があってこそ、仕事の場で能力が開花するのだと感じています。描く力、表現力、発想力、創造性など、みなさんそれぞれがお持ちのキラリと光る資質を、ぜひここで生かしてほしいです。

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デザイン部。報道フロアには扉やパーテーションがなく、記者やデザイナーが自由に出入りし意見を交換します。
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報道デザイン部
デザイナー
山本 美雪さん
2012年|グラフィックデザイン卒

デザインに真摯に向き合った経験と
考える観点、自ら働きかける姿勢が
多摩美で得た収穫です

紙面のエディトリアル、イラストやタイトルロゴの作成、デジタルサイトなど、デザイン部の仕事は多岐にわたります。特集の企画から入ることもあり、先日は「日帰り観戦ができるか?」というユニークな切り口で平昌五輪を伝える、という仕事を担当しました。
何よりスピードが求められる仕事です。記事は、地図やグラフ、チャートなどで構成されていますが、これらの制作作業はもう反射神経的な感じ(笑)。大小ありますが、年間500本以上は手掛けています。

基礎力がプラスアルファの表現に

今の仕事の魅力は、小さなロゴから半年掛りの紙面の企画まで、幅広く携われることです。タイポグラフィー、ブックデザインなど、在学中に培ったすべての技術が今に生きています。ですが報道デザインとは、それ以上に様々な表現が求められる仕事。「これでは表現しきれないが、どうしたら良いだろう?」と悩んだ時、実は、基礎力である教育課程での学びからヒントが引き出されることも多いんです。多摩美時代の同級生の中には、やりたいことを優先するあまり、この部分で手を抜く人もいました。でも私の仕事においては、あらゆるデザインやその手法に触れ、真摯に向き合った経験がすごく良かったんですね。例えば「イラスト担当」のようにひとつの作業を専門とする仕事より、いろんな引き出しを出したり増やしたりしながらモノを作る今のスタイルが、自分に合っているのでしょう。
また、いろんな部署の方と仕事をする上ではプレゼン力が必須ですが、視覚言語デザインの授業で「作る必然性を理論づけて考える」という観点を学んだことが生きていますし、指示を待つだけの受け身ではなく自ら働きかける姿勢も、多摩美で得た大きな収穫です。

多摩美には、足りないものを補うものがある

私は高校生の時から、「自分は何を大事にしたいか」ということを強く意識してきました。美大に入って学び、さらに課題の他にも産学共同研究では「首都高速道路・パーキングエリアの展示エリアの提案」をしたり、学科生が手掛けるフリーペーパー『GRAPHPRESS』に参加したりとあらゆることを経験する中で、「私は、誰かが伝えたいことを一番良い形で表現する仕事に就きたい」という意思が明確になりました。ですので、そういう意味では就活には迷いがなく、ラクでしたね。後輩の方にはぜひ、1日1日を無駄にせず、自分が何を大事に制作しているのかを日々考えていてほしい。そうすれば実りある学生生活になるでしょう。これが足りないと思ったら、多摩美にはそれを補うものがあります。少し勇気を出せば、手を伸ばせるはずです。

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連載の目印になるタイトルロゴ。社内では「カット」「ワッペン」と呼ばれます。
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