2011年秋冬期講座

講座番号
3112

保存と修復―作品とともに暮らす、作品をながく慈しむために

連綿と続く文化の営みを今に伝えてくれる美術作品。時とともに傷み、劣化する作品の環境を整え、状態に応じて処置を施す保存修復作業は、医療にもたとえられます。本講座では、さまざまな美術作品の修復過程とともに、作品の保管や扱い方の一端を実演と演習で紹介します。

講座内容

第1回 講義―美術作品の環境と修復(岡)
第2回 油彩画―劣化損傷の修復と管理(鈴木)
第3回 染織品―扱い方と保存方法(深津)
第4回 版画・水彩画―紙の保存と修復(坂本)
第5回 漆芸品・仏像―文化財の保存と修復(髙宮)

開講日 2011年 9月29日、10月13日、27日、11月17日、12月1日の木曜日 全5回
時間 13時30分~16時00分
(第1回のみ13:30~15:00)
場所 上野毛キャンパス
受講料 1万5800円(材料費別途1000円)
定員 30名
申し込み締切 9月8日必着
講師 岡しげみ[本学非常勤講師。専門は保存修復。「横浜トリエンナーレ」コーディネーター]
坂本雅美[紙本保存修復家、本学非常勤講師。紙を支持体とする版画や水彩画の修復に携わる]
鈴木淳[本学非常勤講師。西洋絵画の保存修復に従事しながら、大学等で講義を行う]
髙宮洋子[修復家、作家、本学非常勤講師。乾漆による作品制作や文化財の保存修復も行う]
深津裕子[女子美術大学美術館学芸員。服飾文化史、染織品保存修復を専門として研究]

コラム 「修復の副産物―作品のなかに封印された真実」

美術館や博物館で作品を鑑賞するとき、その作品が修復されているかどうか、おそらくほとんどの方は気にかけられたことはないでしょう。修復とは作品の現状を維持し後世に伝えることを目的とした、いわば歌舞伎の黒衣(くろご)の役割を果たしています。

しかし、作品を修復するための調査で作品の新しい真実が現れてくることがあります。たとえば、過去に加筆された部分を取り除くことで、本来の作品の意味が明らかになったり、仏像や建築物の中に制作時に書き込んだ木片等が見つかり制作年代が特定できるなど、修復がきっかけとなり、今まで考えられていた美術の歴史が塗り替えられることもあるのです。作品のなかに封印された、制作過程の秘密や、時代の痕跡は、表面からだけではわかりません。それが明らかになることは、修復作業の副産物といえるでしょう。

作品の背後にある修復の歴史とともに作品を見たなら、これまで見ていた作品の印象が変わってくるかもしれません。作品と寄り添う保存修復の世界を覗いてみませんか。

 

(文・石井久美子〈事務局〉)