講座レポート

センター長対談
「多摩美術大学へようこそ―この春、美術・芸術との素敵な出会いが待っています」

新たな出会いに心弾む季節。生涯学習センター設立時より当プログラムに携わる二人が、美術・芸術にふれることの魅力について話します。

対談
萩原朔美(本学生涯学習センター長)
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渡辺達正(同・総合プロデューサー)

※2014年3月をもちまして、萩原朔美センター長は退任し、同4月より、渡辺達正がセンター長に就任いたしました。

対談者
萩原朔美―映像作家、本学教授。演劇、文章、実験映画、写真、版画等、表現の発見を繰り返す。〈1番上の写真左〉
渡辺達正―版画家、本学教授。銅版画の幅広い技法を指導し、自身もさまざまな技法で制作。〈1番上の写真右〉

渡辺 萩原先生、センター長を務められて何年になりますか。
萩原 6年―ですね。
渡辺 どうですか、いろいろな方が多摩美の生涯学習講座に来てくださっています。
萩原 ありがたいですね。私も長年大学で学生を教えてきて、ここで生涯学習の受講生の皆さんにふれて感じたのは、教員と受講生が一方的に教える教えられる関係じゃないという愉しさですね。相手の人生や考え方に対して私たちが教えられることもある。それでこちらも技術や専門知識を教える。互いに教える教えられる関係というのが面白いなと思います。

互いに教える教えられる関係

渡辺 やはり皆さん熱心ですね。自分のお金と時間を使って来ているから、それだけのものは得たい、何かを身につけたい。人生でやっておきたいことがはっきりしている。
萩原 それは感じますよね。
渡辺 これからは、八王子キャンパスにも、もっとあそびに来ていただきたいと思っているんですよ。ここは広いし、学生の人数が多い。周りで学生たちが熱心に制作をしている空気にふれられる。
萩原 それは刺激になりますよね。逆に学生にも刺激になってくれたら、なおよい。
渡辺 多摩美は、生涯学習センターと大学とが切り離された組織や場所で社会人と向き合っている大学とは違っています。せっかくだから、学生も参加できて、影響し合い、学び合う、そういう生涯学習が生まれてくればいいですね。

表現にふれることの豊かさ

萩原 やっぱり、何が人生を豊かにするかっていうと、最後は、表現にふれることの豊かさというのがあると思うんですね。心が動いた時は何かなって考えたときに、表現されたものとの出会いがある。
 自分も、ものをつくる喜びを味わいたいというところから出発して、人間って何をつくってきたんだろうと思い至る。そこから西洋美術や日本美術を学び始めたりする。知的な欲求に駆られることと表現することは併走の関係ですね。
 生涯学習は、今まであまり美術と接点がなかった方が、ふらっと美術館に入って、そこでラファエロと出会って、うわっ、と心に灯がともる瞬間みたいな体験を提供できたらいいですね。人生をいかに芸術が豊かにするかということの発見をしていただきたいなと思います。

美術・芸術との素敵な出会い、提供します

渡辺 そうですね。だから私たちの版画講座でも、最初はまず表現する楽しさを味わっていただこうと心がけています。本当はそこまで行く困難さも準備もあるんですが、一度感激すると、自分で全部やりたくなるというのが美術のいいところですよね。誰でもできてしまう。
萩原 私たちは、その美術・芸術とのお付き合いの最初の部分を提供いたします、というね。人生に寄り添い、人生を共にできる、芸術という、いい〈伴侶〉に出会っていただきたい。
渡辺 そう、そして後はそれぞれがご自分の手で探していく―。たとえば学生の作品に出会って、ずっとコレクションしてくださっている方もいるんです。生涯つき合えるいい作品、いい美術と出会っていただきたいですね。

すべての美術をあそぶ、人生をあそぶ

萩原 多摩美の生涯学習では、こどもたちを対象とした「あそびじゅつ」というのをやっているんですけれど、本当はすべての美術をあそぶということが生涯学習なんじゃないかと思うんです。つまり、生涯学習は全部「あそびじゅつ」なんですよね。講義をあそぶ、実技をあそぶ、というね。
渡辺 それ、いいじゃないですか。
萩原 やっぱり最終的には「人生をあそぶ」ということになる。
渡辺 それを肝に銘じて。

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