講座レポート

「散策・江戸名所図会を中心に―東京を歩きながら江戸を楽しむ」
海老塚耕一さん

【2018年4月19日~6月21日(木) 全3回】

江戸時代―。挿絵入りの当時の観光案内書としておなじみの『江戸名所図会』や、風俗や暮らしぶりを描いた『浮世絵』をのぞいてみると、かつてその時代に生きていた庶民のおおらかで楽しそうな姿が伺えます。図会と浮世絵を片手に、現代の東京から江戸の街を探す〈小さなあそび旅〉に出掛けました。

まず初回に訪れたのは、亀戸。賑やかな駅前を抜け少し細道へ入ると、閑静な住宅街の中にぽつぽつと寺社が現れてきます。そもそも「亀戸」という地名の由来は、亀ヶ井という井戸があったから、亀島という島があったから···などと諸説あるよう。かつては海中の孤島といえるような場所だったのでしょうか。

江戸時代初期に開削された運河である、北十間川に沿って歩いていくと、横十間川との合流点にかかる柳島橋にさしかかります。そこからは、かのスカイツリーを望むことができました。当時の人々はこれ程の高さの建物が江戸のど真ん中に建つなど、夢にも思わなかったでしょう。
最後に訪れたのは、有名な亀戸天神。名所図会や浮世絵に数多く描かれる象徴的な太鼓橋や社の様子は、規模は小さくなったものの今も健在で、当時の面影を強く感じるたたずまいでした。

次の回に訪れたのは、王子。このあたりは、飛鳥山や王子神社など名の知れた寺社が多く、江戸人士の行楽・散策の地で、春は花見で一層賑やかでした。

音無川沿いに歩いていくと、かつて「王子七滝」と呼ばれた立派な滝も、今は枯れてしまっているものがほとんどということが分かります。
かつて川沿いに並んでいた料亭の数々も、老舗の「扇屋」のみが駅前に名を残すのみです。当時の華やかさとは異なり、卵焼き屋さんとして王子の味を今も変わらず伝え続けていました。

亀戸・王子界隈ともに、江戸時代とガラッとかわってしまったところもあれば、面影をそのまま残し、当時の人々の息遣いさえ感じられそうな所もありました。
現在の様子・名所図会・浮世絵を行ったり来たりして見比べることで、ちょっとした相違点を見つけたり、新たな興味が湧いてくる。そんな楽しい発見の旅でした。

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